アガサ・クリスティー「葬儀を終えて」

アガサ・クリスティー「葬儀を終えて」

久しぶりに読むアガサ・クリスティー

図書館で見かけ、久しぶりに手に取ったアガサ・クリスティー「葬儀を終えて」。
クリスティーを最後に読んだのは、もう20年以上前。戯曲「ねずみとり」が最後だった。
その何年か後に、ロンドンへ舞台を見に行ったから、よく覚えている。
今回「葬儀を終えて」を読み、やっぱりクリスティーは面白い!巧い!と感じた。




「葬儀を終えて」について

「葬儀を終えて」は、謎めいた遺産相続と家族間の複雑な人間関係が巧みに描かれた作品で、彼女の生涯で60本以上書かれた長編小説の中でも、傑作といわれている。
クリスティーの最も有名な探偵であるエルキュール・ポアロが登場する作品。
文庫本で約480ページ。彼女の長編小説の中でも、かなり長い作品の部類に入るだろう。

舞台は、大富豪の死後に開かれる遺産相続の場。兄の死をきっかけに、兄弟姉妹が一堂に集まる場面から物語が始まる。
まさに、古典的ともいえる「本格推理」モノらしい始まりだ。
序盤は、大勢の登場人物の紹介が淡々と続く。
物語が動きはじめる32ページ目まで、クリスティーに慣れていない人には、じゃっかん退屈に感じるかもしれない。
でもそこを乗り越えると、一気に物語が転がりはじめ、面白くなっていく。

結末は非常に衝撃的で、古い作品だが、ミステリーファンを十分に満足させる内容だと思う。

感想/アガサ・クリスティーのこと

今回久しぶりに読んであらためて感じたのは、クリスティーはテレビドラマや映画で見るよりも、小説で読む方が断然面白いということだった。
たんにストーリー展開やトリック、結末の意外性だけに面白さがあるのではなく、個性的で生き生きとした人物たち、それぞれの心の中にある愛憎、欲望、嫉妬、弱さ、孤独といった普遍的なテーマが掘り下げられていく。

その描写が、推理小説という枠を超えてとにかく面白いのだ。
たとえば東野圭吾の作品は映像で見ても十分面白いけれど、クリスティーの面白さは、小説じゃないと味わえないと思う。

ちなみに、クリスティーは1890年生まれ。
「葬儀を終えて」は1953年に刊行された小説だから、彼女が63歳の時に書かれた作品だ。
ポアロものの25作目にあたる。

クリスティーは、この話をどのくらいの時間をかけて書いたのだろう?
着想から始まり、どんなメモをとり、この長い物語を執筆していったのだろう?
僕は読みながら、途中何度も、クリスティーが実際に書いている姿を想像してみた。
パソコンのなかった時代。

物語が佳境に入り、結末に近づくにつれ読者が先へ先へと読み急ぎたくなってくる中で、作者自身もはやる気持ちになったに違いない。

その感情を抑えて、急ぎすぎず、バランスを失わず、どんなふうに1文字1文字書き進めていったのだろう?

彼女が63歳でこの作品を書いたというのは、本当にすごいことだなあと思う。
自分がその年齢になったとき、情熱を持って何かに向き合えているだろうか?
人生、まだまだこれから、やれることはたくさんがあるのだ。そんな励まされた気持ちになった。

「葬儀を終えて」をきっかけに、図書館にたくさんあるクリスティの本を、あらためて1冊1冊楽しんで楽しんでいきたいなと思う。

それではまた。

アガサ・クリスティー「葬儀を終えて」〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 )

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